「懸垂をやってみたいけど、家にバーがない」
「器具を買う前に、器具なしでできる練習はある?」
懸垂0回の人が最初にぶつかるのが、この「器具がない」問題です。この記事では、器具なしで自宅でできる懸垂の代わりの練習と、器具なしではできないこと、器具を用意するタイミングをまとめます。
結論:器具なしでできるのは「引く力の準備」まで
器具なしで、懸垂の代わりを完全にすることはできません。懸垂にいちばん近い「ぶら下がる」「体を引き上げる」練習には、体重を支えるバーが必要だからです。
ただし、器具なしでも懸垂の準備はできます。肩甲骨の動かし方を覚えたり、背中で引く感覚をつかんだりすることです。器具がないあいだは準備を進め、ぶら下がる練習を始めるときにバーを用意する、という順番がおすすめです。
| 器具なしでできる | バーが必要 | |
|---|---|---|
| 肩甲骨の動かし方を覚える | ○ エア・スキャプラ、壁スキャプラ | ― |
| 背中で引く感覚をつかむ | ○ テーブルロウ、リュックロウ | ― |
| ぶら下がる力(握力・肩) | ✕ | ○ 足つきぶら下がり、デッドハング |
| 体を引き上げる力 | △ テーブルロウで一部 | ○ 斜め懸垂、トップホールド、ネガティブ |
| 懸垂の1回 | ✕ | ○ |
器具なしで自宅でできる、懸垂の代わりの練習3つ
① エア・スキャプラと壁スキャプラ(肩甲骨の動きを覚える)
懸垂は、腕で引く前に肩甲骨を下げるところから始まります。この動きは、バーがなくても練習できます。このサイトでは、スキャプラ・プルアップの記事で「Level 0」「Level 1」として紹介している練習です。
エア・スキャプラ(Level 0)
- 立ったまま(または座って)、両手をバンザイのように上げる
- 肩をすくめて、耳と肩を近づける
- 肘を伸ばしたまま、肩をストンと落とし、さらに下へグーッと押し込む。少し胸を張るのがコツ
壁スキャプラ(Level 1)
- 壁の前に立ち、バンザイをして壁に手をつく
- 肘を伸ばしたまま、手のひらを壁に沿って下にすべらせるイメージで肩を下げる
- 脇の下に力が入る感覚をつかむ
バーを用意したあとは、この動きをぶら下がった状態で行う「スキャプラ・プルアップ」に進みます。
② テーブルロウ(背中で引く感覚をつかむ)
丈夫なテーブルの下に仰向けで入り、天板の縁をつかんで胸を引き寄せる練習です。器具なしでできる練習の中では、いちばん懸垂に近い「体を引き寄せる」動きができます。
- 脚がしっかりした、重いダイニングテーブルを選ぶ
- テーブルの下に仰向けで入り、胸の上あたりに天板の縁がくる位置に体を置く
- 天板の縁を肩幅でしっかりつかむ
- 体をまっすぐに保ったまま、胸を天板の縁に近づける
きついときは、ひざを曲げてかかとを床につけると負荷が下がります。
安全のための注意
- キャスター付きの机、折りたたみテーブル、ガラスの天板は使わない
- 最初は体重を少しずつかけて、テーブルが浮いたり傾いたりしないか確かめる
- 少しでもぐらつくテーブルなら、この練習はやめる
- 天板の縁が薄くて指に食い込む場合は、タオルを挟む
くわしいフォームはインバーテッドロウ(斜め懸垂)の記事で紹介しています。
③ リュックロウ(片手で引く)
テーブルが使えない人は、リュックを重りにして引く練習ができます。重さを自分で調整できるのがよいところです。
- リュックに本や水の入ったペットボトルを入れる(最初は軽めに)
- 片手と片ひざをいすやベッドにつき、背中をまっすぐにして前かがみになる
- もう片方の手でリュックを持ち、肘を後ろへ引いて、リュックを脇腹に引き寄せる
- ゆっくり下ろす。左右を同じ回数行う
腕で持ち上げるのではなく、肘を後ろへ引く意識で行うと、背中を使いやすくなります。背中が丸まるほど重いときは、中身を減らしてください。
ダンベルやトレーニングチューブがある場合
ダンベルを持っている人は、リュックの代わりにダンベルで同じ動き(ワンハンドロウ)ができます。重さを細かく選べるので、少しずつ重くしていけます。
トレーニングチューブで引く練習もありますが、チューブを固定する場所が必要です。ドアに挟んで固定する方法は、ドアや金具が外れるおそれがあるので、このサイトではすすめていません。チューブは、バーを用意したあとにチューブアシスト・プルアップで使うのがおすすめです。
体重を減らすのも、器具なしでできる準備
懸垂で引き上げるのは自分の体重です。体重が軽くなるほど、懸垂は楽になります。器具がないあいだに食事を見直しておくのも、立派な準備です。くわしくは懸垂0回脱出には減量も近道で紹介しています。
器具なし期間の練習メニュー例
器具がないあいだは、次のような流れで練習するのがおすすめです。回数は目安です。きつければ減らし、フォームがくずれない範囲で行ってください。
| 順番 | 練習 | 回数の目安 |
|---|---|---|
| 1 | エア・スキャプラ | 10回×2セット |
| 2 | 壁スキャプラ | 10回×2セット |
| 3 | テーブルロウ(またはリュックロウ) | 8〜10回×2〜3セット(リュックロウは左右それぞれ) |
頻度は週2〜3回、練習の間を1〜2日あけるのが目安です。肩甲骨の練習(1と2)は軽い負荷なので、短い時間なら毎日やってもかまいません。頻度の考え方は懸垂の練習頻度の記事にまとめています。
このサイトがすすめていないこと:ドア枠の器具とドアを使う練習
「器具なし」で調べると、ドアの枠に取り付ける懸垂バーや、ドアにタオルを挟んで引く練習が出てくることがあります。このサイトでは、どちらもすすめていません。
ドアや枠の強さは家ごとに違い、体重をかけたときに外れたり、ドアや壁が傷んだりするおそれがあるからです。懸垂0回の人は、ぶら下がるだけでもバランスを崩しやすいので、外れたときにけがをしやすくなります。
家にあるもので、バーの代わりになる?
「懸垂 代用」で調べると、家の中のいろいろな物が出てきます。ただ、懸垂0回の人がぶら下がる場所としては、次の物はどれもおすすめできません。
- ドアやドアの枠:外れたり、ドアが傷んだりするおそれがある
- カーテンレールや物干し竿:体重を支えるように作られていない
- 階段の手すりやロフトのはしご:落ちたときに大けがにつながる
- 庭の木の枝:折れるおそれがあり、強さが確かめられない
体重をかけるものは、体重を支えるために作られた物を使うのが基本です。公園の鉄棒か、床に置く懸垂器具を使ってください。
バーが使える場所:公園の鉄棒とジム
器具を買う前に、ぶら下がる練習だけでも始めたい人は、公園の鉄棒やジムのバーを使う方法があります。
- 公園の鉄棒:無料で使える。高さが合えば、足つきぶら下がりや斜め懸垂もできる
- ジム:懸垂バーやアシストマシンがある。通う時間と費用がかかる
人の目が気になって続かない人は、ジム・公園で懸垂が恥ずかしいときの記事も参考にしてください。
器具を用意するタイミング
このサイトの懸垂達成ロードマップでは、最初のSTEP00「足つきぶら下がり」からバーを使います。器具なしの準備で肩甲骨の動きがわかってきたら、それが器具を用意するタイミングです。
自宅に置くなら、ドアや壁に取り付けない、床に置くタイプの懸垂器具がおすすめです。懸垂スタンドと鉄棒型の違いは懸垂スタンドと鉄棒型の比較に、わたしが使っている鉄棒型についてはWASAI BS312-Xのレビューにまとめています。器具を置く場所の考え方は懸垂0回の初心者が最初に揃える自宅環境を参考にしてください。器具を用意したあとの1週間の練習の組み方は、懸垂の初心者メニューにまとめています。
まとめ
- 器具なしで、懸垂の代わりを完全にすることはできない
- 器具なしでできるのは「引く力の準備」:エア・スキャプラ、壁スキャプラ、テーブルロウ、リュックロウ
- 体重を減らすことも、器具なしでできる準備
- ドア枠の器具やドアを使う練習は、このサイトではすすめていない
- ぶら下がる練習を始めるときが、床に置く懸垂器具を用意するタイミング
よくある質問
- Q器具なしの練習だけで、懸垂はできるようになる?
- A
器具なしの練習だけで懸垂ができるようになる、とは言えません。懸垂には、自分の体重でぶら下がる力と、体を引き上げる力が必要で、その練習にはバーが必要です。器具なしの練習は、バーを使う練習を始めたときに、スムーズに進むための準備と考えてください。
- Q腕立て伏せは懸垂の代わりになる?
- A
代わりにはなりません。腕立て伏せは体を「押す」動きで、主に胸や腕の後ろ側を使います。懸垂は体を「引く」動きで、主に背中や腕の前側を使います。どちらも大切ですが、懸垂の練習としては「引く」動きが必要です。
- Qドア枠に付ける懸垂バーはダメ?
- A
このサイトではすすめていません。ドアや枠の強さは家ごとに違い、外れたときにけがをするおそれがあるからです。自宅で練習するなら、床に置くタイプの懸垂器具を選んでください。
- Qテーブルロウとリュックロウ、どちらがいい?
- A
安全に使える丈夫なテーブルがあるなら、テーブルロウがおすすめです。自分の体を引き寄せる動きなので、懸垂に近い練習になります。テーブルが使えないときは、リュックロウで背中で引く感覚をつかんでください。
- Qジムのラットプルダウンは懸垂の代わりになる?
- A
ラットプルダウンも、懸垂と同じように上から引く動きの筋トレです。ただし、ぶら下がって自分の体を引き上げる懸垂とは、体の使い方に違いもあります。ジムに通える人は、懸垂バーやアシストマシンとあわせて使うのがおすすめです。くわしくはラットプルダウンで懸垂はできるようになる?で、研究をもとに紹介しています。



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