ラットプルダウンで懸垂はできるようになる?何キロ引ければいいかと、懸垂0回の人の使い方

ラットプルダウンで引く男性と、懸垂バーにぶら下がる男性の比較

「ジムのラットプルダウンを続ければ、懸垂もできるようになる?」
「ラットプルダウンで何キロ引ければ、懸垂1回に届く?」

懸垂0回の人がジムに行くと、まず目に入るのがラットプルダウンのマシンです。どちらも上から引く動きなので、「これで懸垂の代わりになるのでは」と考える人は多いと思います。この記事では、研究でわかっていることをもとに、ラットプルダウンと懸垂の関係と、懸垂0回の人の使い方をまとめます。

結論:役に立つけれど、ラットプルダウンだけでは足りないことがある

ラットプルダウンは、懸垂と同じように背中で引く力を育てられる種目です。ただし研究では、ラットプルダウンで引ける重さと、懸垂ができるかどうかは、思ったほど強く結びついていないことがわかっています。

ですから、懸垂0回の人は、ラットプルダウンを「引く力の土台づくり」として使いましょう。そのうえで、ぶら下がる練習やネガティブなど、懸垂に近い練習を組み合わせるのがおすすめです。

懸垂とラットプルダウンの違い

懸垂ラットプルダウン
動くもの自分の体バー(ケーブルの先の重り)
引く重さ自分の体重がそのまま負荷重りを選べる(体重より軽くも重くもできる)
体の固定ぶら下がって体を支える必要がある太ももをパッドで押さえて座る
握力体重を支え続ける握力が必要重りの分だけ
重さの調整そのままでは調整できない細かく変えられる

いちばん大きな違いは、懸垂は自分の体を動かし、ラットプルダウンはバーを動かすことです。懸垂では、ぶら下がった体がぶれないように支えながら引き上げる必要があります。ラットプルダウンは座って体を固定できるので、引く動きだけに集中しやすくなります。

研究でわかっていること

① ラットプルダウンで引ける重さは、懸垂の最大より小さい

大学生の男女58人を調べた研究では、1回だけ引ける最大の重さを、体重に対する割合で比べています。その結果、懸垂(体重に重りを足したり、補助で軽くしたりして測った最大)よりも、ラットプルダウンのほうが小さい値でした(Johnson et al., 2009)。

懸垂の最大ラットプルダウンの最大
男性体重の約1.16倍体重の約0.93倍
女性体重の約0.73倍体重の約0.55倍

つまり、同じ人でも、ラットプルダウンでは懸垂ほど重いものを引けないということです。また、両者の関係は男性ではそこそこ強かった一方、女性でははっきりしませんでした。

② ラットプルダウンが強くても、懸垂が多くできるとは限らない

大学の女子水泳選手28人を調べた研究では、懸垂の回数とラットプルダウンの最大重量の関係は弱いものでした。体重が重い人ほど、ラットプルダウンでは重いものを引ける一方、懸垂の回数は少ない傾向がありました。この研究は、2つの種目は似ているけれど、トレーニングの中で置き換えるべきではないと結論づけています(Halet et al., 2009)。

③ 体の使い方にも違いがある

逆手の懸垂(チンアップ)とラットプルダウンを比べた研究では、体を引き上げる局面で、懸垂のほうが上腕二頭筋や背骨まわりの筋肉がよく働き、肩の動きも大きいと報告されています(Doma et al., 2013)。見た目は似ていても、体の使い方は同じではありません。

④ ラットプルダウンを続けて、懸垂の回数が増えた研究もある

もともと運動をしている男子大学生が、8週間ラットプルダウンのトレーニングを続けたところ、懸垂の回数が増えたという研究があります(Li et al., 2025)。ラットプルダウンが懸垂の力を伸ばす助けになることを示す結果です。

ただし、この研究の対象は、もともと懸垂ができる人でした。懸垂0回の人がラットプルダウンだけで1回に届くかを調べた研究は、見つかりませんでした。

「ラットプルダウンで何キロ引ければ懸垂できる?」への答え

「体重の◯割を引ければ懸垂1回」と言えたら便利ですが、ラットプルダウンの重さを懸垂に換算する確かな方法はありません。研究で見たように、2つの関係は人によってばらつきが大きく、とくに女性でははっきりしませんでした。

もう一つの理由は体重です。体重が重い人は、ラットプルダウンでは重いものを引けても、懸垂では自分の重い体を引き上げなければなりません。ラットプルダウンの重さだけを見ていると、「こんなに引けるのに、なぜ懸垂ができないんだろう」と迷いやすくなります。

懸垂に向けた自分の位置は、体重を計算に入れて懸垂力を数字にするPULLUXで見るのがおすすめです。体重と懸垂の負荷の関係は、懸垂の負荷は何キロ?でも紹介しています。

懸垂0回の人のラットプルダウンの使い方

ジムに通っている懸垂0回の人は、次のように使うのがおすすめです。

  1. 背中で引く感覚をつかむ:軽めの重さで、肩をすくめずに、肘を脇腹に引き寄せる。腕だけで引いている感覚があれば、重さを下げる
  2. 懸垂に近い練習を組み合わせる:ぶら下がる練習(デッドハング)や、上から下りる練習(ネガティブ・プルアップ)、アシストマシンがあればそれも使う
  3. 懸垂に近い練習を先にやる:疲れる前に、いちばん目標に近い練習をする。ラットプルダウンは後に回す
  4. 進み具合はPULLUXで見る:ラットプルダウンの重さが増えたかどうかより、ぶら下がれる時間や、上で止まれる時間が伸びたかを見る

ぶら下がる力や、体を支えて引き上げる力は、ラットプルダウンだけでは育てにくい部分です。このサイトの懸垂達成ロードマップは、その部分を段階的に練習できるように組んでいます。1週間の組み方は懸垂の初心者メニューを参考にしてください。

ジムに通わない人は、自宅で同じ順番で進められる

ラットプルダウンがなくても、懸垂0回から1回は目指せます。自宅に床に置くタイプの懸垂器具があれば、ロードマップの順番どおりに練習できます。まだ器具がない人は、器具なしで自宅でできる懸垂の代わりから始めてください。器具の選び方は懸垂スタンドと鉄棒型の比較にまとめています。

まとめ

  • ラットプルダウンは、背中で引く力を育てる助けになる
  • ただし研究では、ラットプルダウンの重さと懸垂の回数の関係は強くなく、置き換えるべきではないとされている
  • ラットプルダウンの重さを懸垂に換算する確かな方法はない。体重が重いほど差が出やすい
  • 懸垂0回の人は、ぶら下がる練習やネガティブと組み合わせ、懸垂に近い練習を先にやる
  • 進み具合は、体重を計算に入れるPULLUXで見る

よくある質問

Q
ラットプルダウンと懸垂の練習、どちらを先にやる?
A

懸垂に近い練習(ぶら下がる、ネガティブ、アシストマシンなど)を先にやるのがおすすめです。目標にいちばん近い練習を、疲れていない状態で行うためです。ラットプルダウンは、そのあとに引く力の補強として行いましょう。

Q
アシストマシン(補助付きの懸垂マシン)とラットプルダウンの違いは?
A

アシストマシンは、足元の台が体を押し上げて体重を軽くし、自分の体をバーまで引き上げるマシンです。ラットプルダウンと違い、自分の体を動かすので、懸垂により近い練習になります。ジムにあれば、懸垂0回の人にとって使いやすい選択肢です。

Q
女性もラットプルダウンで懸垂に近づける?
A

引く力を育てる助けにはなります。ただ、研究では女性の場合、ラットプルダウンの重さと懸垂の関係がはっきりしませんでした。ぶら下がる練習など懸垂に近い練習を組み合わせることが、より大切になります。女性向けの考え方は女性が懸垂できるようになるための完全ガイドにまとめています。

Q
ラットプルダウンで体重と同じ重さを引ければ、懸垂はできる?
A

そうとは限りません。体重と同じ重さを引けても懸垂ができない人もいれば、体重より軽い重さしか引けなくても懸垂ができる人もいます。ラットプルダウンの重さは目安の一つとして使い、懸垂に近い練習の記録とあわせて判断してください。

参考文献

  • Johnson D, Lynch J, Nash K, Cygan J, Mayhew JL. Relationship of lat-pull repetitions and pull-ups to maximal lat-pull and pull-up strength in men and women. J Strength Cond Res. 2009;23(3):1022-1028. PubMed
  • Halet KA, Mayhew JL, Murphy C, Fanthorpe J. Relationship of 1 repetition maximum lat-pull to pull-up and lat-pull repetitions in elite collegiate women swimmers. J Strength Cond Res. 2009;23(5):1496-1502. PubMed
  • Doma K, Deakin GB, Ness KF. Kinematic and electromyographic comparisons between chin-ups and lat-pull down exercises. Sports Biomech. 2013;12(3):302-313. PubMed
  • Li Q, Yan J, Qiao M, et al. Eight-week lat pull-down resistance training with joint instability leads to superior pull-up endurance performance and reduced antagonist coactivation in recreationally active male college students. Eur J Sport Sci. 2025;25(1):e12243. PubMed

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