「懸垂の平均って何回なんだろう」
「自分は0回。もしかして、かなり少ないほう?」
平均回数を調べるのは、自分の位置を知りたいからだと思います。この記事では、ネットでよく見る「懸垂の平均回数」がどこから来た数字なのかを整理し、懸垂0回の人が平均の代わりに見るべき目安を紹介します。
結論:日本の大人の懸垂の平均回数を示す、公的なデータはない
日本の大人が懸垂を平均で何回できるのかを示す、国の新しい調査データはありません。国が毎年行っている体力の調査に、懸垂の項目がないからです。
ネットで見かける「平均◯回」の多くは、海外のサイトの数字や、トレーニングを記録している人の自己申告の数字です。日本の一般的な大人の平均とは言えません。
だから、平均と比べて落ち込む必要はありません。懸垂0回は、決して珍しいことではありません。見るべきなのは平均ではなく、自分の数字が前に進んでいるかどうかです。
なぜ、日本には懸垂の平均データがないのか
国(スポーツ庁)の「体力・運動能力調査」では、握力、上体起こし、長座体前屈、反復横とび、立ち幅とびなどを測っています。ただし、今の調査項目に懸垂は入っていません。
昔はありました。1964年から1998年まで行われていたスポーツテストでは、12〜29歳の男子が懸垂を行っていました(女子と10・11歳は、斜めに体を傾けて行う斜懸垂)。1999年度から今の新体力テストに変わったときに、懸垂は項目から外れています。
つまり、今の日本の大人について「懸垂の平均は◯回」と言える公式の数字は、見つからないのです。
ネットでよく見る「平均回数」の正体
それでも、ネットには「平均◯回」という数字がたくさんあります。多くは、次のどれかにあてはまります。
| 数字の出どころ | どんなデータか | 0回の人が気をつけたいこと |
|---|---|---|
| 海外のフィットネスサイト | 海外の一般向けの目安。元の調査がはっきりしないものもある | 日本の大人の平均ではない |
| トレーニング記録サイト・アプリ | 利用者が自分で記録した回数を集計したもの | もともと鍛えている人が多く、数字が高めに出やすい |
| 自衛隊・警察・消防などの基準 | 仕事のために決められた合格や級の基準 | 平均ではなく「鍛えている人に求める目標」 |
どれも、それぞれの目的では意味のある数字です。ただ、運動をしていない大人が自分と比べる「平均」としては、使いにくい数字です。
懸垂ができない人は、少なくない
懸垂は、自分の体重をまるごと腕と背中で引き上げる種目です。運動をしている人でも、できないことは珍しくありません。
- アメリカ海兵隊では、女性に懸垂3回を求める基準の導入を延期しました。理由として、新兵訓練を受けている女性の55%が3回できなかったことが報じられています(2014年)。
- 懸垂ができない大学生の女性が、筋力と持久力のトレーニングを続けた研究があります。最後に1回できた人は、できなかった人に比べて、体重に対する筋力が高かったと報告されています(Flanagan et al., 2003)。
毎日訓練を受けている人でも、懸垂はかんたんではありません。そして、できるかどうかを分けたのは「体重に対してどれだけ力があるか」でした。
回数は体重によって大きく変わる
懸垂でバーにかかる負荷は、おおよそ自分の体重です。体重60kgの人は約60kgを、80kgの人は約80kgを引き上げています。くわしくは懸垂の負荷は何キロ?で計算方法を紹介しています。
同じ力を持っていても、体重が重いほど回数は少なくなります。平均の数字の多くは、体重を分けずに集計されています。だから、平均と比べても、自分の本当の位置はわからないのです。体重が重い人の考え方は、体重が重い人の懸垂の記事にまとめています。
懸垂0回の人が、平均の代わりに見るべき目安
0回の人が平均と比べると、どの数字を見ても「足りない」としか感じられません。そこで、このサイトでは回数の代わりに、前に進んでいるかがわかる目安を使っています。
① ロードマップの「クリアの目安」
懸垂達成ロードマップでは、STEPごとに「ここまでできたら次へ」という目安を決めています。回数が0のままでも、どこまで進んだかがわかります。
| STEP | クリアの目安 |
|---|---|
| STEP00 足つきぶら下がり | 足を浮かせて5秒ぶら下がれる |
| STEP01 デッドハング | 30秒ぶら下がり続けられる |
| STEP02 スキャプラ・プルアップ | 肘を曲げずにスムーズに5回 |
| STEP03 インバーテッド・ロウ | 角度45度で10回 |
| STEP04 トップホールド | 正しいフォームで10秒キープ |
| STEP05 チューブアシスト・プルアップ | フォームを崩さず10回 |
| STEP06 ネガティブ・プルアップ | 5秒×5回をコントロール |
② PULLUXで、体重も含めた懸垂力を数字にする
PULLUXは、ぶら下がれる時間やトップホールドの時間、体重、身長などから、懸垂力を数字にする方法です。体重を計算に入れるので、平均回数のように「体重の差」で不公平になることがありません。
比べる相手は、ほかの人ではなく先週の自分です。PULLUXを測定すると、0回のままでも数字が伸びていくのが見えます。記録のつけ方は懸垂0回の練習記録のつけ方を参考にしてください。毎週の練習の組み方は、懸垂の初心者メニューにまとめています。
1回できたら、次の目安は?
最初の1回ができたら、それは平均と比べる必要のない、大きな一歩です。次は、その1回をまぐれで終わらせないことを目指します。くわしくは懸垂1回を定着させるコツで紹介しています。
まとめ
- 日本の大人の懸垂の平均回数を示す、国の新しいデータはない
- ネットの「平均◯回」は、海外サイト・記録アプリ・職業の基準などで、一般の大人の平均とは言いにくい
- 訓練を受けている人でも、懸垂ができないことは珍しくない
- 回数は体重で大きく変わるので、平均と比べても自分の位置はわからない
- 0回の人は、ロードマップのクリアの目安とPULLUXで、先週の自分と比べる
よくある質問
- Q懸垂0回は恥ずかしいこと?
- A
恥ずかしいことではありません。懸垂は自分の体重をまるごと引き上げる種目で、できない大人は少なくありません。人の目が気になる人は、ジム・公園で懸垂が恥ずかしいときの記事も参考にしてください。
- Q30代・40代の平均は何回?
- A
日本の大人を年代別に調べた公的なデータは見つかりませんでした。年代よりも、今の体重と筋力から始めることが大切です。何歳から始めても筋力が伸びることは、30代・40代から懸垂を始めても遅くないで研究とあわせて紹介しています。
- Q女性の平均は何回?
- A
女性についても、日本の大人の公的な平均データは見つかりませんでした。女性が1回を目指すときの考え方は、女性が懸垂できるようになるための完全ガイドにまとめています。
- Q懸垂は何回できたらすごい?
- A
懸垂0回の人にとっては、まず1回できたら十分にすごいことです。回数の目標は、1回ができて、それが定着してから考えれば大丈夫です。
参考文献
- スポーツ庁「体力・運動能力調査」テスト項目の年次推移(e-Stat). https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003295660
- Wikipedia「スポーツテスト」(1964〜1998年の運動能力テスト項目). https://ja.wikipedia.org/wiki/スポーツテスト
- The Christian Science Monitor. Just three pull-ups: Too many for women in the Marine Corps? (2014). csmonitor.com
- Flanagan SP, Vanderburgh PM, Borchers SG, Kohstall CD. Training college-age women to perform the pull-up exercise. Res Q Exerc Sport. 2003;74(1):52-59. PubMed



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