懸垂ができるようになると体はどう変わる?効く筋肉と、懸垂0回から得られる効果

懸垂で働く背中の筋肉(後ろから見たところ)

「懸垂ができるようになったら、体はどう変わるの?」
「どこの筋肉に効いて、どんな効果があるの?」

懸垂0回のうちは、1回できるようになるまでの道のりが長く感じます。だからこそ、その先に何があるのかを知っておくと、練習を続ける理由になります。

この記事では、懸垂で鍛えられる筋肉を研究をもとに整理したうえで、懸垂0回から20回まで続けてきたわたしが感じている変化をお伝えします。あわせて、背中に効いている感じがしないときの直し方もまとめます。

結論:背中を中心に、体と気持ちの両方が変わっていく

  • 懸垂でいちばん大きく働くのは、背中の広背筋。腕や肩まわり、お腹の筋肉も一緒に働く
  • 筋トレを続けると、筋力と筋肉量が伸びることは研究で確かめられている
  • わたしの場合は、背中が変わった感覚、背筋がまっすぐになった感覚、ほかのトレーニングの質の向上、自信、生活習慣の変化があった
  • 懸垂0回の人も、練習を始めた日から「ぶら下がれる時間」や「PULLUX」の数字で変化を感じられる

懸垂で鍛えられる筋肉

部位筋肉主な役割
背中広背筋腕を体に引き寄せる。懸垂の主役
背中大円筋広背筋と一緒に、腕を引き寄せる
背中・肩甲骨まわり僧帽筋(中部・下部)、菱形筋肩甲骨を下げたり寄せたりして、体を安定させる
肩棘下筋、三角筋(後ろ側)肩関節を支え、腕を引く動きを助ける
腕上腕二頭筋、上腕筋、腕橈骨筋肘を曲げる
前腕前腕の屈筋群バーを握り続ける
体幹腹筋群、脊柱起立筋体が揺れたり反ったりしないように支える

懸垂と逆手の懸垂で、広背筋・上腕二頭筋・僧帽筋の下部・棘下筋・大胸筋・脊柱起立筋・外腹斜筋の働きを測った研究では、広背筋が大きく働いていました。逆手では、上腕二頭筋がより働いていました(Youdas et al., 2010)。手の向きを変えた懸垂を比べた別の研究でも、広背筋が大きく働き、全体として筋肉の働き方は似ていたと報告されています(Dickie et al., 2016)。握り方の違いは順手と逆手の違いの記事で解説しています。

わたしが懸垂を続けて変わったこと

ここからは、懸垂0回から20回まで続けてきたわたしが、実際に感じている変化です。研究で確かめられたことではなく、わたしの体験と感覚としてお読みください。

① 背中が変わった。背筋もまっすぐになった感覚がある

懸垂を続けるうちに、背中が変わった感覚があります。また、背筋がまっすぐになった感覚もあります。

② ほかのトレーニングの質が上がった

懸垂をやると、今まで感じたことのない「自分の体の重み」を感じます。この感覚が、腕立て伏せなどほかのトレーニングにも生きてきました。懸垂で体の重みを知ったことで、それまでの腕立て伏せは、自分にとって負荷が弱かったことに気づいたのです。

③ 自信が、内側と外側の両方から強くなった

わたしは、懸垂で自信が強くなるのには2つの方向があると感じています。

  • 外側から:姿勢がよくなった感覚があり、それだけで自然と自信が出てくる
  • 内側から:「懸垂ができる」ということが、自分を認める気持ちや、自分を律する感覚につながる

体の変化と気持ちの変化が、お互いを強め合っているイメージです。

④ 生活習慣を、自分でコントロールできるようになった

わたしは、懸垂は「自分の体を律するトレーニング」でもあると思っています。自分の体重を自分で持ち上げる練習を続けていると、生活習慣や食習慣も、自然と自分でコントロールできるようになっていきました。

わたしの場合は、1か月の禁酒に成功し、その後もお酒の量をだいぶ減らすことができました。減量しながら懸垂を続けるための食事は、懸垂0回から1回を目指す人の朝ごはんでも紹介しています。

もちろん、ここに書いた変化が、誰にでも同じように起きるとは限りません。それでも、懸垂は「1回できた」で終わらず、その先の体や生活にもつながっていく練習だと、わたしは感じています。

研究でわかっている効果と、よく言われるけれど根拠が弱いこと

研究でわかっていること

  • 筋トレを続けると、筋力と筋肉量が伸びる。初心者には週2〜3回の筋トレがすすめられている(ACSM, 2009)
  • 練習を始めたばかりの時期は、筋肉が太くなる前に、体の使い方がうまくなることで力が伸びやすいと考えられている
  • 懸垂では、背中の広背筋が大きく働く(Youdas et al., 2010/Dickie et al., 2016)

よく言われるけれど、根拠が弱いこと

  • 「懸垂をすれば逆三角形になる」:背中の筋肉は鍛えられますが、見た目の体型は体脂肪の量や体のつくり、食事などにも左右されます。懸垂だけで体型が決まるわけではありません
  • 「懸垂で姿勢がよくなる」:わたし自身は背筋がまっすぐになった感覚がありますが、懸垂で姿勢がよくなることが研究で確かめられているとは言えません

懸垂0回でも、練習を始めた日から得られるもの

「1回できるまでは、何の変化もない」と思うかもしれません。でも、懸垂0回の時期にも、体は少しずつ変わっています。

こうした変化を数字で書き残していくと、「1回」までの距離が縮んでいることが見えてきます。記録の方法は懸垂0回の練習記録のつけ方にまとめています。

背中に効いている感じがしないときの直し方

練習を始めた人の中には、「腕ばかり疲れて、背中に効いている気がしない」という人もいると思います。次の4つを確認してみてください。

① 肩をすくめたまま引いている

肩が耳に近づいたまま引くと、背中より首や肩のまわりに力が入りやすくなります。引き始める前に、まず肩を下げる(肩甲骨を下げる)動きを入れてみてください。この動きだけを練習するのがスキャプラプルアップです。

② 腕だけで引こうとしている

わたしは、肘を脇腹に突き刺すような感覚で引いています。「手でバーを引き寄せる」と考えるより、「肘を下に引く」と考えたほうが、背中で引く感覚がつかみやすくなります。

③ 上を向きすぎて、体が反っている

わたしは懸垂のとき、目線を前に向けています。上を向きすぎると、体が反ってしまうからです(顎がバーまで上がらないとき)。

④ 背中より先に、握力が切れている

背中が疲れる前に手が限界になると、背中に効かせきる前に練習が終わってしまいます。わたしは、この問題をパワーグリップで解決しました。

懸垂0回の人は、どこから始める?

まだ懸垂ができない人は、負荷の軽い練習で「背中で引く感覚」をつかむところから始めましょう。

練習のあとにどこが筋肉痛になったかも、どこを使えたかの目安になります(懸垂の筋肉痛はどこに出る?)。

まとめ

  • 懸垂でいちばん大きく働くのは背中の広背筋。腕や肩まわり、お腹の筋肉も一緒に働く
  • 筋トレを続けると、筋力と筋肉量が伸びることは研究で確かめられている
  • わたしの場合は、背中や姿勢の感覚、ほかのトレーニングの質、自信、生活習慣が変わった
  • 「逆三角形になる」「姿勢がよくなる」は、懸垂だけで決まるとは言えない
  • 懸垂0回でも、ぶら下がれる時間やPULLUXの数字で変化を感じられる
  • 背中に効かないときは、肩を下げてから引く・肘を脇腹に突き刺す感覚・目線は前・握力対策

よくある質問

Q
懸垂だけで逆三角形の体になれる?
A

懸垂で背中の筋肉は鍛えられますが、見た目の体型は体脂肪の量や体のつくり、食事などにも左右されます。懸垂だけで決まるものではないので、食事や体重の管理もあわせて考えるのがおすすめです(懸垂と体重の関係)。

Q
腕ばかり筋肉痛になるのは、やり方が間違っている?
A

間違いとは限りません。懸垂では腕の筋肉も働くので、腕が筋肉痛になるのは自然なことです。ただ、背中にまったく感じない場合は、肩をすくめたまま引いていないか、腕だけで引いていないかを確認してみてください。

Q
懸垂でお腹の筋肉も鍛えられる?
A

懸垂では、体が揺れたり反ったりしないように、お腹の筋肉も働きます。お腹を中心に鍛えたい場合は、ハンギングレッグレイズなど、お腹を主に使う種目を組み合わせるのがおすすめです。

Q
順手と逆手、背中に効くのはどっち?
A

研究では、順手と逆手で広背筋の働きに大きな差は見られていません。逆手では上腕二頭筋がより働きます。このサイトでは、測定と1回の目標を順手にしています。

参考文献

  • American College of Sports Medicine. (2009). Progression models in resistance training for healthy adults. Medicine & Science in Sports & Exercise, 41(3), 687–708.
  • Youdas JW, Amundson CL, Cicero KS, Hahn JJ, Harezlak DT, Hollman JH. (2010). Surface electromyographic activation patterns and elbow joint motion during a pull-up, chin-up, or perfect-pullup™ rotational exercise. Journal of Strength and Conditioning Research, 24(12), 3404–3414.
  • Dickie JA, Faulkner JA, Barnes MJ, Lark SD. (2016). Electromyographic analysis of muscle activation during pull-up variations. Journal of Electromyography and Kinesiology, 32, 30–36.

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