「毎日ぶら下がっているのに、懸垂は今日も0回だった」
懸垂ができないうちは、回数を記録しても、ずっと「0回」が並びます。これでは、前に進んでいるのか止まっているのかがわかりません。わからないまま練習を続けるのは、とてもつらいことです。
この記事では、懸垂0回の時期でも進み具合が数字で見える記録のつけ方をまとめます。記録するのは、週1回の測定(秒数・体重・PULLUXスコア)と、毎回の練習(やったかどうか)の2つだけです。
懸垂0回のうちは「回数」を記録しても、進み具合は見えない
懸垂の記録というと、「何回できたか」を書くイメージがあると思います。でも、0回の人にとって回数は、1回目ができるまでずっと0のままです。
実際には、0回の間にも体は変わっています。ぶら下がれる秒数が伸びたり、あごをバーの上で止めていられる時間が少しずつ長くなったりします。回数では、この変化が見えません。
だから、懸垂0回の時期は「回数」ではなく、秒数と体重を記録します。
わたしは記録していなかった。だからPULLUXを作った
わたし自身は懸垂0回のころ、練習の記録をつけていませんでした。PULLUXは、懸垂ができるようになったあとから作ったものです。
作った理由は、懸垂ができないまま挫折する人が多いのは、1回までの道のり(ロードマップ)と、自分が今どこまで進んでいるか(進捗)がわからないからだと考えたからです。
進み具合を記録することには、研究の裏づけもあります。目標に向けた進み具合のモニタリングを扱った138の研究をまとめた分析では、進み具合を確かめる人ほど目標を達成しやすく、その効果は、記録として書き残したときや人に報告したときに大きくなっていました(Harkin et al., 2016)。
頭の中で「たぶん伸びている」と思うだけでなく、数字を書き残すことが大事です。
記録は「週1回の測定」と「毎回の練習」の2つに分ける
記録には2種類あります。
| 週1回の測定 | 毎回の練習 | |
|---|---|---|
| 目的 | 今の力を数字で知る | やったことを残す |
| やること | デッドハングとトップホールドを全力で測り、PULLUXを計算する | 自分のSTEPの練習をする |
| 記録すること | 日付・体重・秒数・スコア・メモ | 日付・種目・秒数や回数・セット数 |
測定は全力を出し切る「テスト」なので、毎回の練習とは分けます。測定の頻度は週1回がおすすめです。理由はPULLUXの測定方法の記事で説明しています。
週1回の測定で記録する6つの項目
- 日付
- 体重(kg)
- デッドハング(秒):バーにぶら下がり続けた秒数(上限60秒)
- トップホールド(秒):あごをバーの上で止めていられた秒数
- PULLUXスコア:PULLUXの計算ページに入力して出た数字
- メモ:寝不足だった、仕事で疲れていた、など
身長と性別は変わらないので、記録するのは最初の1回だけで大丈夫です。
記入例
下の表は、記録のイメージをつかむための例です(男性・身長170cmの場合。数字は説明用に作ったもので、わたしの記録ではありません)。
| 体重 | デッドハング | トップホールド | PULLUX | メモ | |
|---|---|---|---|---|---|
| 1週目 | 70.0kg | 25秒 | 0秒 | 0.10 | 初回 |
| 2週目 | 70.0kg | 30秒 | 2秒 | 0.25 | |
| 3週目 | 69.5kg | 35秒 | 4秒 | 0.42 | |
| 4週目 | 69.5kg | 34秒 | 4秒 | 0.41 | 寝不足 |
| 5週目 | 69.0kg | 40秒 | 6秒 | 0.58 |
この例では、回数は5週間ずっと0回です。それでもスコアは0.10から0.58まで上がっていて、1.0までの距離が縮んでいることがわかります。4週目のように少し下がる週があっても、全体として上がっていれば問題ありません。
測定の条件をそろえる
条件がばらばらだと、数字が伸びたのか、条件が変わっただけなのかがわからなくなります。毎回、次の条件をそろえてください。
- 同じバーで測る
- 練習の前など、疲れていないときに測る
- パワーグリップは外す
- 握り方を毎回同じにする(このサイトではサムアラウンドをすすめています)
- 体重は同じタイミングで測る(例:朝、トイレのあと)
細かいルールはPULLUXの測定方法|正しい数値を出す7つのルールにまとめています。
毎回の練習は「やったかどうか」がわかれば十分
毎回の練習の記録は、細かく書かなくても大丈夫です。記録が面倒になって練習自体をやめてしまうほうが、ずっともったいないからです。
- 日付
- 今のSTEP(例:STEP2 スキャプラプルアップ)
- 秒数または回数 × セット数
これだけで、「先週は何回練習したか」「同じ種目をどれくらい続けているか」がわかります。どのSTEPから始めればいいかは懸垂達成ロードマップで確認できます。
ぶら下がれない人は「手にかかる重さ」を記録する
まだバーにぶら下がれない人は、デッドハングが0秒になるので、PULLUXのスコアも0のままです。この時期は、PULLUXの代わりに手にかかっている重さを記録します。
足を体重計にのせたままバーを握り、「体重 − 体重計の数字」を計算すると、手で支えている重さが出ます。たとえば体重70kgで体重計が35kgなら、手にかかっているのは35kgです。この数字が体重に近づいていくのが、進んでいる証拠です。やり方はぶら下がれない人の最初の一歩(STEP0)で説明しています。
記録の見方:3つのパターン
① スコアが上がっている
今の練習が合っています。同じSTEPを続けて、次のSTEPに進む目安を満たしたら進みます。
② 2〜3週続けて、スコアが横ばい
デッドハングとトップホールドのどちらが止まっているかを見ます。PULLUXでは、トップホールド1秒がデッドハング18秒分の価値を持つので、スコアを動かしやすいのはトップホールドです(PULLUX感度分析)。
今のスコアで何が足りていないかは、PULLUXスコアの見方の表で確認できます。また、体重が1kg減るだけでもスコアは上がります。
③ スコアが下がった
1回だけなら、寝不足や疲れ、測った時間帯の違いで数字がぶれることはよくあります。メモ欄を見て、条件が違っていなかったか確かめてください。何週も下がり続けるなら、練習のしすぎで疲れがたまっているかもしれません。数日しっかり休んでから測り直します。
数字が下がっても、失敗ではありません。記録があるから、「何かがいつもと違う」と気づけるのです。
記録する道具は、続けられるものでいい
記録はスマホのメモでも、紙のノートでも、表計算ソフトでもかまいません。大事なのは道具ではなく、週1回、同じ項目を書き残し続けることです。
PULLUXの計算ページでスコアを出したら、その数字をメモに写す。最初はこれだけで十分です。
まとめ
- 懸垂0回のうちは、回数ではなく秒数と体重を記録する
- 記録は「週1回の測定」と「毎回の練習」に分ける
- 測定では、日付・体重・デッドハング・トップホールド・PULLUX・メモの6項目を書く
- 条件をそろえて測ると、数字の変化を信じられる
- ぶら下がれない人は、手にかかる重さ(体重 − 体重計)を記録する
- スコアが止まったら、どの数字が止まっているかを見る
懸垂0回の暗闇の中でも、数字を書き残していけば、1.0までの距離が見えてきます。まずは今日、PULLUXを測定して、最初の1行を書いてみてください。
よくある質問
- QPULLUXは毎日測ってもいい?
- A
おすすめしません。測定は全力を出し切るテストなので、毎日行うと疲れが抜けず、練習の時間も取れなくなります。週1回、細かく知りたい人でも2〜3日に1回までにしましょう。
- Q記録をつけ忘れた週はどうする?
- A
気にせず、次の週から再開すれば大丈夫です。1週分が空いても、前後の数字を比べれば進み具合はわかります。
- Q懸垂が1回できたら、記録はやめていい?
- A
1回目ができたら、今度は回数を記録できるようになります。1回目がまぐれで終わらないように、懸垂1回を定着させるコツも参考にしてください。
参考文献
- Harkin B, Webb TL, Chang BPI, Prestwich A, Conner M, Kellar I, Benn Y, Sheeran P. (2016). Does monitoring goal progress promote goal attainment? A meta-analysis of the experimental evidence. Psychological Bulletin, 142(2), 198–229.



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