懸垂の練習を続けていると、肘の内側がズキッと痛んだり、握るたびにうずいたりすることがあります。「このまま続けていいのか」「どこかを痛めたのでは」と不安になる人も多いと思います。
この記事では、医療機関や医学文献の情報をもとに、懸垂で肘の内側が痛むときに考えられることと、練習を続けてよいかの目安、握らずにできる代わりの練習をまとめます。わたし自身は肘を痛めた経験がないため、体験ではなく、調べた情報として紹介します。
※この記事は診断や治療の代わりにはなりません。痛みが続くときや、下で紹介する「受診したほうがいいサイン」があるときは、整形外科を受診してください。
肘の内側が痛いときに考えられること
肘の内側の骨のでっぱりには、手首を手のひら側に曲げる筋肉や、前腕を内側にひねる筋肉の腱がついています。握る動きや手首を曲げる動きを、力を入れてくり返すと、この腱に負担がかかって痛みが出ることがあります。これを「上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)」と呼びます(MSDマニュアル家庭版)。
懸垂は、バーを強く握ったまま体を支え続ける運動です。名前はゴルフ肘ですが、ゴルフをしない人でも、握る動きをくり返すことで起こることがあります。
よくある症状
- 肘から前腕の内側が痛む
- バーを握ると痛みが強くなる
- 手首を手のひら側に曲げると痛みが強くなる
- 握る力が弱くなったように感じる
すぐに受診したほうがいいサイン
次のような場合は、懸垂の練習を止めて、整形外科を受診してください。
- 薬指や小指がしびれる:肘の内側の近くを通る神経(尺骨神経)が刺激されている可能性があります。内側上顆炎の人の約2割に、この神経の症状が一緒に見られるとされています(StatPearls)
- 腫れている、熱を持っている
- ぶつけた・ひねったなど、はっきりしたきっかけがある
- 肘が曲げ伸ばししにくい、引っかかる感じがある
- 数週間たっても良くならない、だんだん強くなっている
痛みがあるとき、懸垂の練習は続けていい?
基本は、痛みが出る動きを避けることです。医療機関の情報では、まず痛む動作を避けて安静にし、痛みが軽くなってから、手首や前腕の筋肉を強くする運動を始めるとされています(MSDマニュアル家庭版、米国整形外科学会)。痛みを我慢して懸垂を続けるのはやめましょう。
また、内側上顆炎の多くは、手術をしなくても良くなるとされています(StatPearls)。焦って練習に戻るより、痛みが引くのを待つほうが、結果的に早く懸垂の練習に戻れます。
痛みの程度に合わせて、次のように考えると判断しやすくなります。
- 握ると痛い、日常生活でも痛む:バーを握る練習はすべて休む。気になるときは受診する
- 日常生活では痛まないが、ぶら下がると痛む:握らずにできる練習(下で紹介)だけを続ける
- 握っても痛まない:手にかかる重さを軽くしたところから、少しずつ再開する
握らずにできる代わりの練習
肘の痛みで懸垂を休んでいても、懸垂1回に向けてできることはあります。
- 地上で肩甲骨を下げる練習:バーを握らずに、立ったままバンザイをして肩を下げる練習です。懸垂の引き始めに必要な「肩甲骨を下げる感覚」を覚えられます。やり方はスキャプラプルアップの記事の「Level 0:エア・スキャプラ」「Level 1:壁を使ったスキャプラ」で紹介しています
- 体重を見直す:懸垂は自分の体重を引き上げる運動なので、余分な体脂肪が減れば、再開したときの1回が軽くなります。懸垂と体重の関係の記事や朝ごはんの記事を参考にしてください
再開するときの目安
握っても痛まなくなったら、いきなり以前と同じ練習に戻さず、手にかかる重さを軽くしたところから始めます。
- 足をついた状態から始める:STEP0(体重計を使った足つきぶら下がり)なら、手にかかる重さを体重の30%などから数字で調整できます
- 握る負担を道具で減らす:パワーグリップを使うと、バーを強く握り込まなくても体を支えやすくなります
- 回数と頻度を少なめにする:最初は1日おき、または週2〜3回、セット数も少なめから
- 痛みが出たら一段階戻る:再開して痛みが出たら、その日は止めて、前の段階に戻ります
痛みを防ぐために
練習の前に前腕を温め、練習のあとに前腕を伸ばしておくと、肘まわりの負担を減らす助けになります。やり方はウォーミングアップの記事で紹介しています。肘や肩の痛みが、すぐに受診したほうがいい痛みかどうかの見分け方も、同じ記事にまとめています。
肩が痛い場合は、懸垂で肩が痛い・肩が鳴るときの判断を参考にしてください。
まとめ
- 懸垂で肘の内側が痛むときは、握る・手首を曲げる筋肉の腱に負担がかかっている(ゴルフ肘)可能性がある
- 薬指・小指のしびれ、腫れ、曲げ伸ばしの引っかかり、長引く痛みがあるときは受診する
- 痛みがある間は、痛む動きを避ける。握らない練習と体重の見直しは続けられる
- 再開は、手にかかる重さを軽くしたところから、数字で少しずつ戻す
痛みで練習を休むのは、遠回りではありません。痛みが引いたら、懸垂0回から1回へのロードマップの続きから進めましょう。
よくある質問
- Q肘の外側が痛いときは?
- A
肘の外側の痛みは、手首を反らす筋肉の腱に負担がかかる「上腕骨外側上顆炎(テニス肘)」の可能性があります。内側と同じく、痛む動きを避け、しびれや腫れがあるとき、長引くときは整形外科を受診してください。
- Qサポーターは使ったほうがいい?
- A
米国整形外科学会の情報では、前腕に巻くタイプのサポーターで腱にかかる力を減らす方法が紹介されています。使うかどうかや選び方は、整形外科で相談してください。
- Q冷やしたほうがいい?
- A
医療機関の情報では、痛む部分を冷やすことが痛みをやわらげるのに役立つとされています(米国整形外科学会では、タオルなどで包んだ保冷剤を約20分あてる方法を紹介しています)。肌に直接あてないようにしてください。
参考文献
- MSDマニュアル家庭版「上腕骨内側上顆炎」
- American Academy of Orthopaedic Surgeons, OrthoInfo「Medial Epicondylitis (Golfer’s Elbow)」
- StatPearls「Medial Epicondylitis」(NCBI Bookshelf)



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