「インバーテッド・ロウで引く力が付いてきた。トップホールドで身体を支える自信もついた。でも、いざぶら下がって身体を引き上げようとすると、ピクリとも動かない」
そんな壁にぶつかっていませんか?
実は、「ぶら下がった状態から身体を引き上げる」という動作は、これまでのステップとは次元の違う筋力と神経系が必要になります。ここが多くの人が挫折しやすい最大の難所です。
この記事では、そのギャップを埋める最強のツール「トレーニングチューブ」を使った『チューブアシスト・プルアップ』について解説します。
この記事を読むことで、自重だけでは不可能だった「フルレンジ(全可動域)での懸垂動作」を疑似体験でき、脳と筋肉に正しい動きを記憶させることができます。

これができれば「自力での懸垂」はもう目の前です。
チューブアシスト・プルアップとは懸垂の予行演習
チューブアシスト・プルアップとは、トレーニングチューブ(レジスタンスバンド)の弾力を利用して体重の一部を補助し、本来の筋力だけでは難しい「懸垂の上下運動」を行うトレーニングです。
初心者が懸垂できない最大の理由は、単純に「自分の体重>背中の筋力」だからです。チューブを使うことで、体重の負荷を20kg~30kg(チューブの強度による)減らし、現在の筋力でも「引く」動作を可能にします。
例えば、自転車に乗れない子供が補助輪を使うのと同じです。まずは補助輪(チューブ)付きでペダルを漕ぐ(懸垂する)感覚を掴み、徐々に補助を弱くしていくことで、最終的に補助なしで乗れるようになります。つまり、筋力が足りない段階でも、正しいフォームで「身体を引き上げる予行演習」ができる唯一の方法なのです。
なぜ懸垂達成にチューブアシストプルアップが必要なのか
結論から言うと、「懸垂の動きそのもの」を練習できる唯一の方法だからです。
これまでのステップには、実は「足りない要素」がありました。
- インバーテッドロウ: 「引く」動きですが、方向が「横(水平)」でした。
- トップホールド: 方向は「縦(垂直)」ですが、「止まっている」だけでした。
本番の懸垂は「縦方向に」「体を動かし続ける」必要があります。 しかし、まだ筋力が足りない段階では、自分の体重を動かすことさえできません。これでは、いつまで経っても「正しいフォーム」や「力の入れ方」を脳が学習できません。
そこでチューブの出番です。 チューブが体重の一部を肩代わりしてくれることで、今の筋力のままで「未来の懸垂の動き」をシミュレーションできます。「耐える力」と「引く力」を繋ぎ合わせ、懸垂達成への最後の回路を繋ぐために、このステップは不可欠です。
チューブアシスト・プルアップのやり方
正しいセットアップとフォームで行うことが、効果を最大化させる鍵です。
以下のステップで行います。
- セッティング
- 鉄棒やバーにチューブをかけます。
- 垂れ下がった片方の輪の中に、もう片方の端を通します。
- そのまま引っ張って締めます。
- 装着
- 片足をトレーニングチューブの輪の中にしっかりと入れ、もう片方の足をその上に乗せてクロスさせます(両足で踏むことで安定します)。
- 必ず土踏まずの深い部分にかけ、両足でしっかり踏んで固定されていることを確認してから引き始めてください
- グリップ
- 肩幅よりやや広めにバーを握り、過去記事で学んだ「デッドハング」の姿勢を作ります。
- 動作開始
- まず「スキャプラ・プル(肩甲骨の下制)」を行い、肩を下げます。
- そこから胸をバーに近づけるイメージで、肘を腰にぶつけるように引きます。
- フィニッシュ: 顎がバーを越える位置(トップホールドの位置)まで引いたら、ゆっくりと元の位置に戻ります。
引くときは、腕の力ではなく「肘で地面を押す」イメージを持つと、広背筋を意識しやすくなります。

常にトレーニングチューブがピンと張った状態をキープして行いましょう。
チューブアシスト・プルアップをやる上での注意点
最も重要なのは、トレーニングチューブの「反動(バウンド)」を使わないことです。
チューブは一番下(ボトム)でゴムが強く伸びるため、トランポリンのように「ビヨーン」と跳ね上がりたくなります。しかし、これではゴムの力で上がっているだけで、一番鍛えたい「初動の筋力」が全く育ちません。
また、急激なバウンドは肩関節に強い衝撃を与えるため、怪我のリスクも高まります。
【よくあるNG例】
- ❌ 一番下についた瞬間、バネの力で勢いよく飛び上がる。
- ❌ 降りるときに力が抜け、ストンと落ちてしまう(ネガティブ動作の欠如)。
【対策:1秒ポーズの法則】
ボトムポジションで「カチッ」と一瞬静止(1秒ポーズ)を入れてから引き始めましょう。 完全に勢いを殺すことで、反動を防ぎ、純粋な「筋肉の力」だけで引くことができます。
チューブアシスト・プルアップの負荷を落としたやり方
「チューブを使っても上がらない」 そんな時は、遠慮なくチューブの強度(太さ)を上げてください。
- 太いチューブを使う
- チューブが太いほど、体を持ち上げるサポート力が強くなります。
- 足元を安定させる
- 足にかけるのが怖い場合は、膝にかけたり、台を使って乗り降りしましょう。
<ポイント>
軽い負荷に逃げるのではありません。「正しいフォームで最後まで引く」ために負荷を調整するのです。見栄を張らず、今の自分がきれいに引ける太さまで調整しましょう。
クリア基準
いよいよ自重トレーニング(ネガティブ懸垂や本番の懸垂)に進むための目安です。 チューブの補助があっても高回数をこなせないうちは、まだ基礎体力が不足しています。焦らず以下の基準を目指しましょう。
【クリア条件】
- 細めのチューブ(補助:弱)で → 正しいフォームで 10回 × 3セット
- または、中強度のチューブ(補助:中)で → 余裕を持って 15回以上
【この基準の意味】 ここまでできれば、背中の筋肉は十分に発達しており、脳に「引き上げる動作パターン」が深く刻まれています。
この基準をクリアしたら、いよいよ補助を外す時です。さらに負荷の高い「ネガティブ・プルアップ」や、自重100%の懸垂に自信を持って挑みましょう。
まとめ
チューブアシスト・プルアップは、単なる補助種目ではありません。懸垂という目標に向けた、本番さながらの「最終リハーサル」です。
【このステップの核心】
- 役割: 不足している筋力を補い、脳と体に「垂直に引く動き」をインストールする。
- 注意: 反動(バウンド)は厳禁。一番下から一番上まで、自分の意志でコントロールする。
- 進歩: チューブを徐々に「細く」していくことこそが、自重懸垂への最短ルート。
最初は極太のチューブに頼っても構いません。それは決して恥ずかしいことではなく、「正しく強くなるための戦略」です。
そのゴムの助けが少しずつ不要になっていく過程で、あなたの背中は確実に変わっています。

バーにチューブを結びつけ最終リハーサルを行いましょう。

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