懸垂に必要な引く力を鍛える!インバーテッド・ロウ(斜め懸垂)のやり方【STEP3/6】

「ぶら下がることはできる。なんとなく肩甲骨の動かし方も分かってきた。でも、やっぱり身体がピクリとも持ち上がらない」

そんな壁にぶつかっていませんか? 実は、多くの人がここで挫折してしまいます。「デッドハング」や「スキャプラ・プルアップ」を練習していても、いざ身体を引き上げようとすると、まるで身体が鉛になったように重く感じます。

これは、あなたの努力不足ではありません。 単純に、「体重を支えてぶら下がる力」と、「その体重をすべて引き上げる力」の間には、あまりにも大きな筋力のギャップがあるからです。このギャップを埋めない限り、懸垂ができるようにはなりません。

そこで、この記事では、足を地面につくことで負荷を調整し、安全かつ確実に「引く筋力」を鍛える「インバーテッドロウ(斜め懸垂)」について解説します。

この記事を読めば、以下のことが分かります。

  • 懸垂に必要な背中の筋肉に、ピンポイントで効かせる正しいフォーム
  • まだ力が弱い初心者でも無理なく始められる、負荷の調整方法
  • 効果を半減させないための注意点

もし、まだ「ぶら下がるだけで精一杯」という方や、「肩甲骨の使い方が分からない」という方は、過去の記事(Step 1 デッドハング / Step 2 スキャプラプルアップ)も合わせてチェックしてみてください。

SUZUKI20
SUZUKI20

焦って無理やり引き上げようとするのは一旦やめてください。まずはインバーデット・ロウを行い着実に「身体を引き上げるための土台」を作り上げていきましょう。

インバーテッド・ロウ(斜め懸垂)とは

インバーテッド・ロウ(Inverted Row)は、腰から胸の高さほどの低い鉄棒やバーを使い、足を地面につけた状態で身体を斜めに引き上げるトレーニングです。

日本では学校の体力テストや体育の授業で行われることもあります。

一見すると「懸垂ができない人のための簡易版」や「初心者向けの種目」と思われがちですが、それは大きな間違いです。 

インバーテッド・ロウは、自分の体重をコントロールするための体幹の強さと、背中の筋肉を正しく使う「引く力」の基礎を養うための、非常に奥が深く効果的なトレーニングです。

インバーデット・ロウが懸垂達成に不可欠な3つの理由

Step 1(デッドハング)とStep 2(スキャプラ・プルアップ)をクリアしたあなたが、次にぶつかる最大の壁。 それは、「ぶら下がることはできても、そこから身体を持ち上げる筋力が圧倒的に足りない」という現実です。

いきなり通常の懸垂に挑むのは、筋トレ初心者が自分の体重と同じ重さのベンチプレスに挑むようなもの。負荷が高すぎてフォームが崩れるどころか、そもそも身体がピクリとも動かないのは当然のことです。

そこで、この「圧倒的な筋力不足」を埋める架け橋として、インバーテッドロウが不可欠になります。その理由は以下の3点です。

  1. シンプルに「引く力」がつく
    • ぶら下がる力(Step 1)や、肩を下げる力(Step 2)だけでは、身体は持ち上がりません。シンプルに「肘を曲げて身体を引き寄せるパワー」をつける。そのために一番効率が良いのがこの種目です。
  2. 自分に合った重さで練習できる
    • 自分の体重100%はいきなり上がりませんが、斜めになれば半分くらいの力で引けます。「全く上がらない1回」より、「しっかり効かせる10回」の方が、筋肉はずっと早く成長します。
  3. 「背中を使う」コツが分かる
    • 懸垂は腕ではなく「背中」で引く種目です。でも、苦しいとどうしても腕を使ってしまいます。余裕のある強度で練習することで、「あ、今背中を使っているな」という感覚を身体に染み込ませることができます。

インバーテッド・ロウのやり方

それでは、実際にやってみましょう。「ただ引くだけでしょ?」と思わないでください。正しいフォームで行うことが重要です。間違ったフォームで100回やるより、正しいフォームで10回やる方が、確実に懸垂への近道になります。

  1. バーの高さを調整する
    • まずは、鉄棒やバーの高さを選びます。インバーテッドロウの最大の特徴は、「身体の角度」によって負荷を自由自在に変えられることです。
      • バーが高い(身体が起きる) ⇒ 楽になる
        • 足にかかる体重が増えるため、腕と背中への負担が減ります。
      • バーが低い(身体が寝る) ⇒ きつくなる
        • 身体が地面と水平に近づくほど、腕と背中にかかる体重の比率が増えます。
      • 【上級編】足を台に乗せる ⇒ 超高負荷
        • バーよりも高い位置に足を置くと、頭が下がり、通常の懸垂に近い強烈な負荷になります(※今はまだやらなくてOKです)。
      • 【初心者の目安】 最初は「腰~胸の高さ」くらいのバーから始めてみましょう。
    • いきなり低すぎる(きつい)位置でやると、腰が落ちたり、腕の力だけで無理やり引いたりしてフォームが崩れてしまいます。 最初は「少し楽かな?」と思うくらいの高さからスタートし、正しいフォームを固めることを最優先にしてください。
  2. セットアップ(位置取り)
    • バーの高さが決まったら、バーの下に潜り込み、仰向けになります。 バーを握る手幅は「肩幅より少し広め(拳1つ分くらい外側)」で、順手(手の甲が自分の顔の方を向く握り方)でしっかりと握ります。
  3. 姿勢を作る(最重要!空中プランク)
    • 足を前方に伸ばし、かかとだけを地面につけて身体を浮かせます。 ここがフォームの最重要ポイントです!お尻とお腹にキュッと力を入れ、頭からかかとまでが「一直線の板(プランク)」になるように全身を固めてください。 腰が反ったり、逆にお尻がダラリと落ちたりしてしまうと、背中の筋肉に刺激が入りません。「身体を板にする」意識を常に持ちましょう。
    • きつい時は「膝(ひざ)」を曲げてもOK 足を伸ばして姿勢を保つのが難しい場合は、膝を90度に曲げて、足の裏を地面にベッタリつけて行ってみてください。 負荷が軽くなり、フォームが安定しやすくなります。まずはここから始めても十分効果があります!
  4. 引く(Pull)
    • 息を吐きながら、アゴは軽く引き、胸(乳首のあたり)をバーにぶつけに行くつもりで身体を一気に引き上げます。
    • この時、腕の力だけで身体を持ち上げようとしてはいけません。 「背中で肘(ひじ)を地面の方へ引く」ようなイメージを持つと、自然と肩甲骨が寄り、背中の筋肉(広背筋)を強く使うことができます。
  5. 戻す(Release)
    • 息を吸いながら、ゆっくりと元の位置に戻ります。 一番上からガクン!と力を抜いて落ちてしまうのはNGです(肩を痛める原因になります)。
    • 重力に逆らうようにブレーキをかけながら、コントロールして下ろしてください。中途半端な場所で止めず、肘が完全に伸び切るまでしっかり戻りましょう。

インバーデット・ロウをやる上での注意点

怪我なく最短で懸垂を達成するために守ってほしい「3つの約束」をお伝えします。

  1. 「筋肉の痛み」と「関節の痛み」を区別する
    • 背中や腕が熱くなったり、翌日筋肉痛になったりするのは「正しく効いている証拠」です。 しかし、肩や肘の関節の奥に「ピキッ」「ズキッ」という鋭い痛みが走った場合は、直ちに中止してください。それは怪我のサインです。 痛みがある時は無理をせず、数日間休むか、負荷(角度)を軽くして様子を見てください。「休む勇気」もトレーニングの一部です。
  2. いきなり引かない(ウォーミングアップ必須
    • インバーテッドロウはStep 2までよりも高い負荷が身体にかかります。冷え切った固い身体でいきなり始めると、肩や腰を痛める原因になります。 鉄棒に向かう前に、腕を大きく回したり、Step 2で習得した「スキャプラ・プルアップ(またはエア・スキャプラ)」を数回行ったりして、肩周りのエンジンを温めてからメインセットに入りましょう。
  3. 頻度は「毎日」やらなくていい
    • ここがStep 2との大きな違いです! 動きを覚える練習(スキャプラ・プルアップ)とは違い、インバーテッドロウは筋肉の繊維を破壊して強くする「筋トレ」です。筋肉はトレーニング中ではなく、「休んでいる時」に太く強く成長します(超回復)。
      • 推奨ペース: 週に2~3回(1日~2日おき)
      • やり方: 限界に近い回数(10回前後)× 3セット
      • 休息の目安: 筋肉痛が残っている場合は、無理せずその日は休みましょう。しっかり休んで回復した筋肉で、万全の状態で行う方が効果的です。
SUZUKI20
SUZUKI20

焦る必要はありません。 「トレーニング(刺激)」→「食事・睡眠(回復)」→「成長」のサイクルを回すことが、結局は一番の近道になります。

どうしてもきつい時の練習方法

「やってみたけど、1回も上がらない…」「どうしても腰が落ちてしまう」 そんな時は、筋力に対して負荷が高すぎるサインです。無理をする必要はありません。以下の2つの方法で「今の自分に合ったレベル」まで強度を落としましょう。

  • 方法①:バーの位置を高くする
    • もっと高い鉄棒を使うか、バーの位置を上げてください。 身体が垂直に近づけば近づくほど、足にかかる体重が増え、腕や背中にかかる負担は軽くなります。
  • 方法②:膝(ひざ)を曲げる
    • 足の裏を地面にペタッとつけ、膝を90度くらいに曲げて行います(机のポーズのような形)。 足を伸ばして行うよりも支えが安定し、負荷がガクンと下がります。

負荷を軽くすることは「逃げ」ではありません。「正しいフォームで引けるギリギリの強度」を見つける作業です。 膝を曲げた状態で完璧な10回ができるようになったら、少し足を伸ばしてみる。次は完全に伸ばしてみる。そうやって少しずつレベルアップしていけば大丈夫です!

インバーテッド・ロウのクリア基準

漫然と回数をこなすだけでは、自分が成長しているのか分かりにくいものです。 そこで、このインバーテッドロウには、「角度(負荷)」と「回数」で、2段階の明確な合格ラインを設けます。

第1目標:45度で「連続10回」(トップ・ホールドへの挑戦権獲得)

まずは、少し楽な角度で「連続10回」できることを目指します。

  • 角度の目安: 約45度(身体が起きている状態)
  • 基準: フォームを崩さず 連続10回

完璧なフォームで「連続10回」できるようになったら、次のステップである「トップ・ホールド(鉄棒の上でアゴをキープする練習)」の練習を開始してもOKです。

10回連続でできるということは、「背中を使って身体を引き上げるコツ」はすでに脳にインストールされています。 まだ筋持久力が足りないだけですので、インバーテッドロウを継続しつつ、より実戦に近いトップ・ホールドの練習も少しずつ取り入れてみましょう。

最終目標:30度で「連続10回」

トップ・ホールドの練習と並行しながら、最終的には角度をきつくして「連続10回」を目指してください。

  • 角度の目安: 約30度(身体が地面と平行に近づく)
    • ※膝は曲げず、足をピンと伸ばして身体を一直線にする
  • 基準: フォームを崩さず 連続10回

10回を涼しい顔で、フォームを崩さずにこなせるようになった時、あなたの背中は「懸垂を成功させるための土台(引く筋力)」が完全に完成したと言えます。

まとめ

今回は、懸垂0回からの脱出に欠かせないStep 3「インバーテッドロウ(斜め懸垂)」について解説しました。

最後に、重要なポイントをもう一度おさらいしましょう。

  1. 「斜め」から始める
    • いきなり垂直(懸垂)に挑むのは、高すぎる階段を一段飛ばしするようなもの。まずは斜めの状態で「引く力」の土台を作ることが、結果的に最短ルートになる。
  2. フォームが命
    • 身体を一直線に保ち(プランク)、胸から迎えに行く。回数よりも「背中に効いている感覚」を大切にする。
  3. 2段階の目標
    • まずは「楽な角度で10回」を目指し、最終的には「きつい角度で10回」を目指す。

一見すると地味なトレーニングに見えるかもしれません。「早く鉄棒の上に顔を出したい」と焦る気持ちも痛いほど分かります。

しかし、このインバーテッドロウで培った「自分の体重をコントロールして引き寄せる力」は、本番の懸垂であなたの身体がフワッと持ち上がる瞬間に、必ず大きな助けとなります。

SUZUKI20
SUZUKI20

インバーデット・ロウで、強靭な背中のエンジンを作り上げてください。

コメント