- 「懸垂1回を達成するまでのトレーングの全体像が分からない」
- 「今のトレーニングが本当に正しいか不安」
- 「懸垂1回に挑戦する目安がわからない」
懸垂達成に向けたトレーニングは数多く存在しています。 しかし、数多くあるからこそ、「どのトレーニング」を「どの順番」で「どの程度」行うべきか迷ってしまいます。 もし誤ったトレーニングや手順を選んでしまえば、せっかくの努力も空回りし、懸垂達成が遠のいてしまう可能性すらあります。
この記事では、懸垂0回から1回を達成するためのロードマップを説明します。 デッドハングで「土台」を構築するところから、ネガティブ・プルアップによる「実践筋力」の養成まで、やるべきトレーニングを整理し体系化しました。
この記事を読めば、「今、何をすればいいか」が明確になり、最短距離で懸垂達成へと近づくことができます。 闇雲な努力で時間を無駄にするのはもう終わりです。

懸垂は、才能ではなく「技術」と「手順」で攻略できます。 自分の力で重力に打ち勝ち、あごがバーを越える「あの瞬間」を目指して、一緒にトレーニングを始めましょう。
懸垂0から1回を達成するロードマップの全体像
まずは、懸垂0回から1回を達成するまでの全体像を確認しましょう。懸垂達成までの道のりは、大きく以下の6つのステップに分かれています。
- デッドハング:懸垂を行うための「土台」を構築する
- スキャプラ・プルアップ:懸垂の初動の「感覚」を取得する
- インバーテッド・ロウ:引くための「基礎出力」を強化する
- トップホールド:最後まで「引き切る力」を養成する
- チューブアシスト・プルアップ:懸垂の「軌道」を確認する
- ネガティブ・プルアップ:懸垂の「実践筋力」を養成する
重要なのは、これら6つを「積み上げ方式」で行うことです。
各ステップにはクリア基準を設けていますが、基準を超えてもその種目は終わりではありません。「ウォーミングアップ」や「サブ種目」として継続しつつ、次のステップを「メイン種目」として行います。 つまり、段階が進むにつれて、複数のトレーニングを並行して行う形になります。
それでは、各ステップの具体的なやり方と、クリア基準を確認していきましょう。
1.デッドハング:懸垂を行うための「土台」を構築する
すべての始まりは、このデッドハング(ぶら下がり)からです。 まずは自重を支え続ける「握力」と「肩の安定性」という強固な土台を築きましょう。ここが弱ければ、スタートラインに立つことすらできません。
「たかがぶら下がり」と油断しないでください。これは初心者の通過点ではなく、上級者になっても不可欠な「一生モノのトレーニング」です。 1回の懸垂を成功させるのも、10回、20回と記録を伸ばすのも、すべてはこの動作の安定感にかかっています。極めて重要なこのステップに、まずは全力で向き合ってください。
デッドハングのやり方とクリア基準
最初は1秒でも問題ありません。1秒ずつ積み上げていき、まずは30秒、最終的には60秒ぶら下がれるようになるまで継続しましょう。
【やり方】
- バーを握る
- 肩幅か、それより少し広めで握ります。
- 基本は順手(手の甲を自分に向ける)ですが、逆手でも構いません。
- 親指をバーに回す(サムアラウンドグリップ)と握力が安定します。
- ⚠️手が痛い場合は無理をせず、タオルを巻くかパワーグリップを活用してください。
- 足を浮かせて脱力する
- 足を地面から離し、腕と肩の力を抜いてぶら下がります。
- 足はプラプラさせず、両足を揃えるか、膝を曲げて後ろでクロスさせます。
- 姿勢を保つ
- 目線はまっすぐ前を見ます。
- 呼吸を止めず、自然な呼吸を続けます。
【✅ クリア基準】
足を離した状態で30秒間ぶら下がり続ける。

クリア後は、60秒を目指して継続し、日々のウォーミングアップとして定着させましょう。
より詳細にやり方を説明しています。ぜひ確認してください。
デッドハングができない場合は足つきぶら下がりから始める
体重が重い方や、いきなりぶら下がるのが怖い方は、無理せず「足つき」から始めてください。
【やり方】
- 肩幅か、それより少し広めで握ります。
- バーの真下にしゃがみ込みます。
- 腕がピンと伸び切る位置まで、膝をゆっくり曲げて腰を落とします。
- 足裏を地面につけたまま、腕にかかる体重の割合を徐々に増やしていきます。

慣れてきたら、通常のデッドハングに挑戦しましょう。
2.スキャプラ・プルアップ:懸垂の初動の「感覚」を取得する
デッドハングが30秒できるようになったら、次はスキャプラプルアップで懸垂の初動の「感覚」を取得します。
懸垂を行うためには、腕ではなく「背中の筋肉」で引く感覚が極めて重要です。 この種目は、懸垂ができるようになった後も必須のウォーミングアップとなり、美しいフォームを作るための基礎でもあります。デッドハングと同様、「一生行うトレーニング」と認識して取り組みましょう。
スキャプラ・プルアップのやり方とクリア基準
最初は数センチ、あるいは数ミリ動くだけでも構いません。可動域よりも「正しい筋肉が動いているか」を意識し、徐々に大きく動かせるようにしていきます。
【やり方】
- デッドハングの状態を作る
- 全身をリラックスさせますが、肘は完全に伸ばしておきます。
- 肩を下げる
- 肘は絶対に伸ばしたまま、肩をグッと下げて、耳と肩の距離を遠ざけます。
- 「亀が首を長く伸ばす」ようなイメージです。
- 胸を張る
- 肩を下げると同時に、胸を少しだけ天井に向けるように張ると、背中が収縮しやすくなります。
- 肘は絶対に伸ばしたまま、肩をグッと下げて、耳と肩の距離を遠ざけます。
【✅ クリア基準】
肘を曲げずに、スムーズに「5回」行う。

クリア後も、トレーニング前の準備運動として必ず行いましょう。
より詳細にやり方を説明しています。ぜひ確認してください。
スキャプラ・プルアップの感覚が掴めないときは?
日常生活で「肩甲骨を下げる(下制)」という動きをすることは滅多にありません。そのため、いきなりぶら下がって行うのが難しい場合は、地面で動きの練習をしましょう。
【その場で「エア」練習 】
- 立ったまま(椅子に座って)両手をバンザイします。
- 肩をすくめる: 肩と耳をくっつけるように、思い切り肩を上げます。
- 肩を下ろす: その位置から、ストンと肩を落とし、さらに下へグーッと押し込みます(耳と肩を遠ざける)。
- ※この「下へ押し込む」感覚がスキャプラプルアップの正体です。
【壁を使った練習】 壁に手をつくことで、少し負荷をかけて練習できます。
- 壁の前に立ち、両手を高い位置(バンザイの状態)で壁につけます。
- 足先やお腹が壁につくように立ちます
- 肘を伸ばしたまま、手のひらで壁につきます。
- なるべく高い位置に手をつけてください
- かかとは上げない
- 肘を伸ばしたまま、手のひらの位置を下げます。
- 「脇の下」に力が入る感覚があれば正解です

この感覚が掴めたら、再び鉄棒にぶら下がって試してみましょう。
3.インバーテッド・ロウ:引くための「基礎出力」を強化する
通称「斜め懸垂」です。足をつくことで負荷を分散させ、背中で引く筋力の基礎を作ります。 いくら「土台」や「感覚」があっても、単純に身体を持ち上げるための「エンジンの出力(パワー)」が不足していては、懸垂は達成できません。
インバーテッド・ロウのやり方とクリア基準
【やり方】
- セットアップ
- 腰~胸の高さの低いバー(または公園の鉄棒)の下に潜り込みます。
- 肩幅より少し広めにバーを握ります。
- 姿勢を作る
- かかとを地面につけ、頭から足先まで身体を一直線(プランクの状態)にします。
- お尻が落ちたり、腰が反ったりしないように注意しましょう。
- 引く
- 肩甲骨を寄せながら、胸がバーに触れるまで引き寄せます。
- 戻すときも力を抜かず、コントロールして元の位置へ戻ります。
【✅ クリア基準】
- 身体の角度45度で「10回 」

クリア後も、さらに角度を深く(平行に近く)して継続して行いましょう。
インバーテッド・ロウは垂直に近い角度から始める
筋力に自信がない場合は、無理に低い鉄棒を使う必要はありません。 最初は高い鉄棒を使い、ほぼ立ち姿勢(垂直に近い角度)から始めましょう。そこから徐々に足を前に出して角度をつけていきます。
角度よりも「可動域」が大切です。常に「胸をバーにぶつける(タッチする)」イメージで行ってください。
4.トップホールド:最後まで「引き切る力」を養成する
懸垂で多くの人が直面する壁、それは「途中までは上がれるけれど、最後の一押しで顎がバーを超えない」という現象です。 トップホールドは、この「フィニッシュポジション(一番上の状態)」の筋力をピンポイントで強化し、懸垂を完遂させる力(引き切る力)を養います。
【⚠️ 行う前の重要な注意点】
怪我を防ぐため、以下の2点は絶対に禁止です。
- ジャンプして飛びつくのは禁止
- 勢いよくバーに飛びつくと、肩や手首を痛める原因になります。
- 限界が来て「ドスン!」と落ちることは禁止
- 急に脱力すると、肩関節に強烈な負荷がかかり非常に危険です。足をつく瞬間までコントロールしてください。
トップホールドのやり方とクリア基準
【やり方】
- トップポジションを作る
- 必ず台を使うか、足が届く低い鉄棒を使用します。
- あごがバーの上に出る位置まで身体を持ち上げます。
- 静止して耐える
- その位置でピタッと止まり、全身に力を入れます。
- 脇をギュッと締め(肘を脇腹に寄せるイメージ)、背中の収縮を感じます。
- 呼吸と着地
- 呼吸は止めず、短く吐きながら耐えます。
- 限界が来る手前、フォームが崩れそうになったら、ゆっくりと足を着いて終了します。
【✅ クリア基準】
正しいフォームで「10秒間」キープする

余裕ができたら、セット数を増やしたり、少し時間を伸ばしてみましょう。
5.チューブアシスト・プルアップ:懸垂の「軌道」を確認する
まだ自力で引けない場合でも、トレーニングチューブ(ゴムバンド)の弾力を使うことで、擬似的に懸垂を成功させることができます。 ここで重要なのは、筋力アップよりも「ゴムの助けを借りてでも、正しい軌道を身体に覚えさせること」です。
フォームが崩れては意味がないため、最初は強め(太め)のチューブを使うことをおすすめします。
チューブアシスト・プルアップのやり方とクリア基準
【やり方】
- セッティング
- バーにチューブを括り付け、片足または膝をチューブの輪に入れます。
- ※膝よりも「足裏」を入れた方が、ゴムが長く伸びるため補助力が強くなります(初心者におすすめ)。
- スタートポジション
- 完全に腕を伸ばし、デッドハングの状態を作ります。
- 引き上げ
- ゴムが縮む力を借りながら、身体を一気に引き上げます。
- 背中が丸まらないよう、胸をバーに近づけるイメージで行います。
- トップ&リターン
- 顎(あご)がバーを超えた位置で一瞬静止します。
- 重力に負けてストンと落ちないよう、コントロールしながら下ろします。
【✅ クリア基準】
フォームを崩さず「10回 × 3セット」

慣れてきたら、徐々にチューブの強度を弱く(細く)していきましょう。
6.ネガティブ・プルアップ:懸垂の「実践筋力」を養成する
人間の筋肉は、重りを持ち上げる時(短縮性収縮)よりも、重りに耐えながら下ろす時(伸張性収縮)の方が、約1.2~1.4倍強い力を発揮できるという特性があります。 つまり、「まだ身体を持ち上げることはできなくても、ゆっくり下ろすことならできる」のです。
この特性を利用して、自重という高負荷に筋肉を慣れさせ、懸垂に必要なパワーを養います。
ネガティブプルアップのやり方とクリア基準
【やり方】
- トップポジションを作る
- 台を使い、一気にトップポジション(顎がバーの上にある状態)を作ります。
- ※ここは自力で上がる必要はありません。
- 耐えながら下ろす
- 重力に逆らうように、ブレーキをかけながら「5秒~7秒」かけて身体を下ろしていきます。
- 途中でストンと落ちないよう、一定のスピードを保つのがコツです。
- フィニッシュ
- 腕が完全に伸び切る(デッドハングの状態)まで、力を抜かずに耐え切ります。
【⚠️ 重要:疲労管理について】
これが最も懸垂達成に直結するトレーニングですが、筋肉へのダメージが非常に大きいです。 毎日行うのではなく、1日~2日おきに行うなど、疲労管理に十分注意してください。
【✅ クリア基準】
「7秒」かけて下ろす × 5回 をコントロールして行えること

これができれば、自力での懸垂1回は目前です!
PULLUX「1.0」で懸垂1回の「挑戦権」を獲得
では、いつになったら懸垂1回に挑戦するのか。その目安はPULLUXが「1.0」を超えた時です。
PULLUXとは、あなたの懸垂力を可視化する指標で「筋力」を「体重」で割った数値のことです。
以下の記事を確認してましょう。
もし、「1.0」を超えても達成できないときは「技術不足」の可能性
「筋力はあるはずなのに上がらない」場合、原因はパワー不足ではなく「技術不足」にあります。
せっかくのエンジン(背中の筋力)を、タイヤ(身体)にうまく伝えられていない状態です。その場合は、焦らず以下のステップに戻って修正しましょう。
- 初動の再確認:
- ステップ2のスキャプラプルアップを見直し、最初のスイッチが背中に入っているか確認する。
- 軌道の修正:
- ステップ5のチューブアシストプルアップに戻り、力が逃げない「垂直~やや後傾」の軌道を身体に覚え込ませる。

PULLUX 1.0は「合格通知」ではなく、あくまで「挑戦権」です。ここからは、技術という鍵を使って、1回の壁をこじ開けに行きましょう。
まとめ
ここまで、懸垂を0回から1回にするための具体的なロードマップを説明してきました。
正しい手順で階段を登れば、身体は必ず応えてくれます。改めて、私たちが登る6つのステップを確認しましょう。
- デッドハング:懸垂を行うための「土台」を構築する
- スキャプラ・プルアップ:懸垂の初動の「感覚」を取得する
- インバーテッド・ロウ:引くための「基礎出力」を強化する
- トップホールド:最後まで「引き切る力」を養成する
- チューブアシスト・プルアップ:懸垂の「軌道」を確認する
- ネガティブ・プルアップ:懸垂の「実践筋力」を養成する
焦らず、しかし着実に積み上げてください。 このロードマップは、1日でクリアできるものではありません。「できない」と嘆く必要はありません。今の自分に必要なステップに戻り、そこを埋めればいいだけです。

さあ、準備は整いました。 この記事を閉じたら、まずはステップ1の「デッドハング」から始めてみてください。


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