- 「懸垂ができるようになりたいが、身体がピクリとも持ち上がらない」
- 「なぜか懸垂だけできるようにならない」
- 「そもそも、ぶら下げっているだけで手が痛くて耐えられない」
懸垂達成を目指していきなり身体を持ち上げようすることが多いです。しかし、実は、懸垂達成に必要な最初のステップは「正しくぶら下がる」こと、つまりデッドハングを行うことです。いきなり身体を持ち上げようとするのは、基礎工事なしに家を建てるようなものです。
この記事では、懸垂達成を目指すあなたが、まず最初に取り組むべきデッドハングの「正しいやり方」と「明確なクリア基準」を、詳しく説明します。
この記事を読めば、迷いなく、デッドハングに取り組むことができます。
「ただぶら下がるだけでしょ?」と侮ってはいけません。 デッドハングは単なる初心者向けの種目でなく、上級者になっても不可欠な「一生モノのトレーニング」です。 1回の懸垂を成功させるのも、10回、20回と記録を伸ばすのも、すべてはこの動作の安定感にかかっています。

「デッドハング」に取り組み、懸垂達成へのカウントダウンを始めましょう
デッドハング(Dead Hang)とは
デッドハング(Dead Hang)とは、直訳すると「死んだように(Dead)ぶら下がる(Hang)」という意味を持つトレーニングです。 具体的には、鉄棒やプルアップバーに両手でつかまり、重力に身を任せて完全に脱力した状態でぶら下がる動作を指します。
一見すると「ただぶら下がっているだけ」に見えますが、身体の中では以下の2つの現象が同時に起きており、立派な静的運動(アイソメトリック・トレーニング)として分類されます。
- 握力のトレーニング
- 全体重を支え続けるため、懸垂に必要な「握る力」が強力に育ちます。
- 上半身のストレッチ
- 重力に身を任せることで、背骨や肩周りがグーッと引き伸ばされ、可動域が広がります。
つまりデッドハングとは、「上半身をリラックスさせてストレッチしながら、同時に握力というエンジンの基礎を極限まで鍛える」という、相反する要素を組み合わせた種目です。
デッドハングが懸垂に必須な3つの理由
「ただぶら下がるだけで懸垂ができるようになるの?」と疑問に思うかもしれません。しかし、以下の理由から、デッドハングは懸垂攻略における絶対的なまずやるべきトレーニングです。
- 背中より先に「手」が疲れるのを防ぐことができる
- 「バランス感覚」と「正しい姿勢」が身に付くため
- 柔軟性が高まり、「楽に引ける身体」を作ることができる
デッドハングのやり方・5つのポイント
シンプルだからこそ、自己流は危険です。間違ったフォームは肩を痛めたり、すぐに手のひらが痛くなって挫折する原因になります。 上級者も意識している「最も効果的で、長くぶら下がれる正しいフォーム」を徹底解説します。
1. 【最重要】バーの握り方(グリップ)
実は、多くの人がぶら下がる前の「握り」で損をしています。 手のひらの真ん中でガッチリ握るのはNGです。皮膚が挟まって激痛が走ります。
- 基本は「順手」だが「逆手」でもOK
- 順手(オーバーハンド): 手の甲が自分の方を向く握り方。背中の筋肉を効率よく鍛えられるため、基本的には順手を推奨します。
- 逆手(アンダーハンド): 手のひらが自分の方を向く握り方。腕の力(力こぶ)を使えるため、順手よりも楽にぶら下がれます。「順手だとキツすぎて10秒も持たない…」という方は、まずは逆手から始めても構いません。
- 指の付け根で引っ掛ける(フックグリップ)
- 手のひら全体で包み込むのではなく、「指の付け根(マメができるあたり)」をバーの頂点に当てて、指をフックのようにして引っ掛けます。 こうすることで皮膚が挟まれず、痛みを最小限に抑えて長時間ぶら下がることができます。
- 親指は巻く(サムアラウンド)
- 親指をバーの下から回し込み、人差し指・中指の上からロックします。これで握力が逃げなくなります。
2. 手幅と姿勢のセットアップ
- 手幅は「肩幅」が基準
- バンザイをして、そのまま真っ直ぐ上げた位置で握ります。 広すぎると肩への負担が増え、狭すぎると窮屈になります。
- 足を浮かせる
- バーが高い場合は足を揃えて真っ直ぐ伸ばします。 バーが低い場合は膝を曲げて、足首を後ろでクロスさせます。
3. 脱力(デッドハングの完成)
- 耳と肩を近づける
- 腕の力、肩の力を完全に抜いてください。重力に引かれて体が下に沈み、自然と肩が持ち上がって、耳と肩がくっつくような状態になります。これが正しい「デッドハング」の姿勢です。
- 目線は「真っ直ぐ前」
- バーを見上げようとすると首が反ってしまい、首周りに余計な力が入ります。顎を軽く引き、視線は水平(正面)に保ちましょう。これで頭から背中までが一直線に伸びます。
- 背骨を伸ばすイメージ
- 自分の足が重りになったつもりで、腰から背中がグーッと引き伸ばされる感覚を味わいます。
4. 安定させるコツ
- 体幹は少しだけ締める
- 完全にダラッとしすぎると、体が振り子のように揺れてしまいます。 軽くお腹に力を入れ、「石」になったイメージで空中でピタッと静止します。揺れが収まると、握力の消耗を抑えられます。
- 呼吸は止めない
- キツくなると息を止めがちですが、鼻から吸って口から吐く深呼吸を続けましょう。呼吸をすることで筋肉がリラックスし、ストレッチ効果が高まります。
5. 安全な降り方
- 最後が一番危ない
- 限界が来ていきなり手を離してドスンと着地するのは危険です。 限界の「一歩手前」で、足をついてからゆっくりとバーを離してください。急激なリリースは筋肉や関節へのショックが大きいので避けましょう。
デッドハングをやる上での注意点
安全に、そして効率よく成長するために、以下の点に注意してください。
- 肩の「鋭い痛み」はNG
- 筋肉が伸びる「イタ気持ちいい」感覚はOKですが、関節に「ピキッ」「ズキッ」という鋭い痛みが走った場合は直ちに中止してください。無理をすると肩を痛めます。
- 肘はまっすぐに
- 少しでも肘が曲がっていると、背中ではなく腕の筋肉(上腕二頭筋など)を使ってしまいます。肘関節をロックするイメージで伸ばし切りましょう。
- 頻度について
- 基本的には毎日行っても問題ありませんが、前腕がひどい筋肉痛になった場合や、手の皮が痛すぎる場合は1~2日休みましょう。休むこともトレーニングの一部です。
できない人はここから!「足つきデッドハング」
「自分の体重を支えるなんて絶対無理!」「肩が抜けそうで怖い」 そう感じる方は、決して無理をしないでください。まずは「足つき」から始めるのが正解です。これは恥ずかしいことではなく、負荷を自由に調整できる立派な練習方法です。
【やり方】
- ポジション作り
- 肩幅か、それより少し広めでバーを握ります。(低い鉄棒を使うか、高いバーの場合は台に乗って行うと安全です)
- 真下に沈む
- バーの真下に位置し、そのまま真下へしゃがみ込むようにゆっくりと膝を曲げて腰を落とします。
- 腕を伸ばし切る
- お尻を下げていき、腕が完全にピンと伸び切った状態でストップします。足裏は地面(または台)につけたままにしておきます。
- 負荷をコントロール
- この体勢で、腕にかかる体重の割合を徐々に増やしていきます。
- 最初は「足 7:手 3」くらいの感覚でOK。
- 慣れてきたら、膝の力を抜いて「足 2:手 8」へと移行し、最終的に足を浮かせます。
- この体勢で、腕にかかる体重の割合を徐々に増やしていきます。

足をついているだけで、やることは通常のデッドハングと同じです。「背中が伸びる感覚」と「バーを握る感覚」をここで養いましょう。
デットハングのクリア基準
懸垂への道のりは、このデッドハングのタイムを「1秒」ずつ伸ばすことから始まります。 ただ闇雲にやるのではなく、目指すべき明確な「クリア基準」を設定しましょう。
もちろん、いきなり長い時間ぶら下がる必要はありません。誰でも最初は「0秒」からのスタートです。 まずは「1秒でもぶら下がれたら大成功」と思ってください。 昨日の自分より1秒長く耐える。その積み重ねの先に、以下の目標があります。

「昨日は3秒だったけど、今日は5秒できた!」 この小さな積み重ねが、必ず30秒、そして懸垂1回へと繋がります。焦らず、昨日の自分を超えることを楽しんでください。
第1目標:30秒(スキャプラ・プルアップへの挑戦権獲得)
まずは「30秒間」、足を地面につけずにぶら下がり続けることを目指してください。
- なぜ30秒なのか?
- 次のステップである「スキャプラ・プルアップ(懸垂の初動練習)」を行うために最低限必要な握力レベルです。30秒耐えられない握力では、身体を動かした瞬間に手が疲れてしまい、背中のトレーニングになりません。
最終目標:60秒(懸垂1回成功の土台)
スキャプラ・プルアップの練習を始めた後も、デッドハングは継続してください。最終的に目指すのは「60秒」です。
- なぜ60秒なのか?
- 懸垂1回を成功させるには、引き上げてから下ろすまで、身体を完全にコントロールする余裕が必要です。1分間余裕を持ってぶら下がれる握力と体幹があれば、懸垂の動作中に「手が滑るかも」という不安がなくなり、背中の力だけに100%集中できます。

スマホのタイマーをセットして、現在の自分の実力を測ってみましょう!
まとめ
デッドハングは、一見地味なトレーニングですが、懸垂成功への近道であり、最強の基礎トレーニングです。
「早く体を引き上げたい!」とはやる気持ちを抑えて、まずは「30秒間、正しくぶら下がる」ことを目標にしてみてください。 握力が強くなり、肩周りが柔軟になれば、いざ引き上げる練習(スキャプラ・プルアップ)に入ったとき、身体が驚くほど軽く感じるはずです。

早速、近くの公園やジムのバーにぶら下がってみましょう。その最初の「1秒」が、あなたの懸垂1回への第一歩です!

コメント